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「調節」と「調律」の違いとは?一人ひとりに響く調律型マネジメントの進め方

「調節」と「調律」の違いとは?一人ひとりに響く調律型マネジメントの進め方

音叉から広がる音の波と「調節と調律の違い」のタイトルを描いたイラスト

「施策を増やしているのに、エンゲージメントスコアが動かない」「同じ声かけをしても、響く部下と響かない部下がいる」。こうした悩みを抱える人事担当者や管理職の方は少なくありません。

その原因の一つは、組織を「調節」だけで動かそうとしていることにあります。本記事では、似ているようで役割がまったく異なる「調節」と「調律」の違いを整理し、なぜ今「調律」が重要なのか、明日から実践できる進め方まで解説します。

この記事の要点

  • 調節(ちょうせつ)とは、全体に対して量や強さを上げ下げすること。給与、評価制度、研修、業務量の見直しなどが当てはまります。
  • 調律(ちょうりつ)とは、一人ひとりの「音」を聴き、共通の基準に合わせて整えること。個々の内発的動機に合わせた任せ方・伝え方が当てはまります。
  • 調節は組織の土台を、調律はチームの響きをつくります。価値観の個人差が大きい職場ほど、調節だけでは効果が頭打ちになります。
  • 調律は「基準を決める→聴く→合わせる→聴き直す」の継続サイクルで実現します。

調節と調律の違いとは

「調節」と「調律」は、どちらも「整える」という意味をもつ言葉です。しかし、何を基準に、誰に対して整えるのかが大きく異なります。まずは言葉本来の意味から確認しましょう。

「調節」の意味:全体の量や強さを上げ下げする

「調節」とは、物事の程度をちょうどよい状態に整えることです。エアコンの温度調節や、スピーカーの音量調節を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。

つまみを一つ回せば、部屋にいる全員に同じ変化が届きます。調節は「全体に同じ操作をする」ことが前提の整え方です。

「調律」の意味:一人ひとりの音を聴き、基準に合わせる

「調律」とは、楽器の音の高さを基準の音に合わせて整えることです。ピアノの調律師は、200本を超える弦を1本ずつ鳴らし、耳で聴き分けながら張り具合を合わせていきます。

弦ごとに張りの強さも、ずれ方も違います。それでも全体が一つの基準に合っているから、和音が美しく響くのです。調律は「一つひとつ違うものを、共通の基準に合わせる」整え方です。

組織マネジメントにおける調節と調律

本記事では、この2つの言葉を組織マネジメントに置き換えて、次のように定義します。

  • 調節型マネジメント:給与、評価制度、研修、業務量、福利厚生など、組織全体に同じ施策を打ち、その量や強さを上げ下げするマネジメント
  • 調律型マネジメント:一人ひとりの内発的動機(その人を内側から動かす価値観)を把握し、チームの目標という共通の基準に向けて、任せ方・伝え方・関わり方を個別に合わせるマネジメント
観点調節型マネジメント調律型マネジメント
対象組織・部署全体一人ひとり
前提人は同じ刺激に同じように反応する人によって響くものが違う
主な手段報酬、制度、研修、業務量の見直し任せ方、伝え方、フィードバックの個別化
必要な情報全体の平均スコア、離職率など個人の内発的動機、上司と部下の価値観のズレ
頻度年1回の制度改定など、単発定期的に聴き直す、継続
得意なこと不満の解消、公平性の担保意欲・主体性・チームの一体感を高める
限界個人差が大きいと誰にも合わなくなる土台(公正な処遇)がないと機能しない

調節が悪いわけではない:ハーズバーグの二要因理論との関係

とはいえ、調節が不要というわけではありません。米国の心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論」では、仕事の満足と不満足にかかわる要因を次の2つに分けています。

  • 衛生要因:給与、労働条件、人間関係、会社の方針など。不足すると不満が生まれるが、満たしても意欲の向上にはつながりにくい
  • 動機づけ要因:達成、承認、仕事そのもの、責任、成長など。満たされると意欲が高まる

衛生要因を整えるのが「調節」、動機づけ要因に働きかけるのが「調律」と考えるとわかりやすいでしょう。調節で不満をなくし、調律で意欲を引き出す。両者は対立するものではなく、役割の違うパートナーです。

なぜ今、調律が重要なのか

これまで多くの日本企業は、調節型のマネジメントで組織を動かしてきました。しかし、その前提が変わりつつあります。調律が求められる背景には、次の4つの変化があります。

(1)働く人の価値観が多様化している

終身雇用と年功序列が前提だった時代は、「昇給」「昇進」という共通の動機で多くの人を動かせました。しかし今は、世代、キャリア観、ライフステージによって、仕事に求めるものが大きく異なります。

Attunedの調査では、人を内側から動かす動機の組み合わせは何百万通りにものぼることがわかっています。同じ施策が、ある人には響き、別の人には逆効果になる。それが当たり前の時代です。

※Attuned調べ

(2)エンゲージメントの差の7割は上司で説明できる

Gallupの「State of the Global Workplace 2026」によると、日本で熱意をもって仕事に取り組んでいる従業員の割合は8%でした。東アジア平均の18%、世界平均の20%を大きく下回ります。またGallupは、チーム間のエンゲージメントのばらつきの少なくとも70%は、マネージャーによって説明できると報告しています。

全社施策(調節)だけでスコアを動かしにくいのは、このためです。エンゲージメントを大きく左右するのは、現場のマネージャーが一人ひとりにどう関わるかという調律の部分です。

出典:State of the Global Workplace 2026: Japan|Gallup(2025年1〜12月調査)、Managers Account for 70% of Variance in Employee Engagement|Gallup(2015年)

(3)外からの「調節」には副作用がある

心理学者エドワード・デシが1971年に発表した実験では、パズルを解くたびに報酬を受け取った大学生は、報酬がなくなった後、自由時間に自らパズルに取り組む時間が減りました。報酬を受け取らなかった学生には、こうした減少は見られませんでした。この現象は「アンダーマイニング効果」と呼ばれています。

報酬や評価という外発的なつまみを回し続けると、かえって内発的動機が損なわれる場合があります。意欲を高めたいなら、外から量を足すだけでなく、その人がもともと持っている「音」を活かす必要があります。

(4)人的資本経営で「人への投資の効果」が問われている

2023年3月31日以後に終了する事業年度から、上場企業などの有価証券報告書で人的資本に関する情報の開示が義務化されました。人材育成方針や女性管理職比率などを開示するだけでなく、人への投資が成果につながっているかを説明することが、経営に求められています。

研修や制度を全員に一律で届ける調節型の投資は、誰にどんな効果があったのかを説明しにくいものです。一人ひとりへの関わり方の変化とスコアの推移を追う調律型の取り組みは、施策と成果のつながりを説明する材料にもなります。

出典:「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の一部改正|金融庁

調節型マネジメントが陥る3つの落とし穴

調節だけで組織を動かそうとすると、どこかで手詰まりになります。よくある3つの落とし穴を見ていきましょう。

(1)「平均」に合わせて、誰にも合わなくなる

部署平均のサーベイスコアを見て全体施策を決めると、施策は「平均的な誰か」に向けたものになります。しかし、平均的な人は実在しません。

さらに、部署平均では高スコアのチームが低スコアのチームを覆い隠してしまいます。本当に手当てが必要なチームや個人ほど、平均値の中で見えなくなるのです。スコアはチーム単位、できれば個人単位で見ることが欠かせません。

(2)つまみを回し続けないと効かなくなる

昇給や表彰による意欲の向上は、慣れとともに薄れていきます。同じ効果を得るために、より大きな報酬や、より多くの施策が必要になる「インフレ」が起こりがちです。

人事が施策を増やし続け、現場は「また新しい取り組みか」と疲弊する。こうした悪循環は、調節に偏った組織によく見られます。

(3)「不協和音」の原因がわからない

「なぜか部下が動かない」「1on1が形だけになっている」。こうした不協和音の多くは、上司と部下の価値観のズレから生まれています。

たとえば、自律性を重視する上司が「細かく報告しなくていいよ」と任せたつもりでも、フィードバックを求める部下には「放置されている」と映ることがあります。どちらも悪くないのに、ズレが見えないまま関係がこじれていくのです。

全社一律の調節型の施策では、こうした一対一のズレには気づけません。

調律型マネジメントを実践する4つのステップ

ピアノの調律は「基準音を決める→1本ずつ鳴らして聴く→合わせる→時間がたったら調律し直す」という順で進みます。組織の調律も、同じ順序で進めましょう。

ステップ1:基準音を決める(チームの目的と期待値をそろえる)

調律には、全員が合わせる「基準音」が必要です。組織でいえば、チームの目的、目標、守るべき約束事がこれに当たります。

基準音がないまま個別対応を始めると、それは調律ではなく「甘やかし」や「えこひいき」になってしまいます。個別に合わせるのは「どこに向かうか」ではなく、「どう向かうか」の部分です。まずはゴールを全員で共有しましょう。

ステップ2:一人ひとりの音を聴く(内発的動機を把握する)

次に、メンバー一人ひとりが何に動機づけられるのかを把握します。ここで注意したいのは、上司の「感覚」に頼りすぎないことです。

人は、自分が大切にしている価値観を相手も大切にしていると思い込みがちです。1on1でのヒアリングに加え、モチベーションアセスメントのような客観的なデータを使うと、思い込みによるズレを防ぎやすくなります。

ステップ3:合わせる(任せ方・伝え方・フィードバックを個別化する)

把握した内発的動機に合わせて、日々の関わり方を調整します。Attunedの11のモチベーターのうち、代表的な6つについて、関わり方の例をまとめました。

モチベーター響きやすい関わり方響きにくい関わり方
自律性ゴールと期限だけを伝え、進め方は任せる手順まで細かく指示する
フィードバック短いサイクルで具体的に声をかける期末の評価面談まで何も伝えない
安全性変更は早めに、背景と影響範囲を添えて伝える突然の方針転換を事後報告する
利他性その仕事が誰の役に立つのかを伝える数字の達成だけを強調する
成長少し背伸びが必要な役割を任せる慣れた業務だけを繰り返し任せる
合理性判断の根拠やデータを示す「とにかくやって」と結論だけ伝える

たとえば、同じ「週1回、進捗を共有してほしい」という依頼でも、自律性が高いメンバーには「監視されている」と感じられ、フィードバックを求めるメンバーには「見てもらえている」と感じられます。依頼の中身は同じでも、伝え方を変えるだけで受け取られ方は大きく変わります。

ステップ4:定期的に調律し直す

ピアノの弦は、湿度や温度の変化で少しずつ狂っていきます。人の動機も、異動、昇格、ライフイベントなどをきっかけに変化します。

一度把握して終わりではなく、パルスサーベイや定期的な1on1で「音のずれ」を確認し続けましょう。調律は単発のイベントではなく、習慣です。

Attunedで調律を「仕組み」にする

調律型マネジメントの考え方はシンプルですが、マネージャー一人の勘と努力だけで続けるのは簡単ではありません。部下が10人いれば、10通りの「音」を聴き分ける必要があるからです。

Attuned(アチューンド)は、その名のとおり組織の「調律」を支えるために設計されたサービスです。4つのステップそれぞれに、対応する機能があります。

ステップAttunedの機能できること
1. 基準音を決める組織文化の可視化チーム全体が大切にしている価値観を把握し、共通の基準づくりに活かす
2. 一人ひとりの音を聴くモチベーションアセスメント55問・10〜15分程度の回答で、11の内発的動機(モチベーター)を可視化する
3. 合わせる対人モチベーターギャップ、AI TalkCoach上司と部下の価値観のズレを可視化し、相手に響く伝え方をAIが提案する
4. 調律し直すエンゲージメントサーベイ、心理的安全性アセスメント2週間ごと・約30秒のパルスサーベイと、チーム単位の心理的安全性の測定で変化を追う

「聴く」から「合わせる」までを一つの流れに

Attunedの特徴は、測って終わりにしないことです。アセスメントで把握した内発的動機のデータをもとに、AI TalkCoachが「この部下に、この難しいフィードバックをどう伝えるか」といった具体的な場面で、相手に合わせた伝え方を提案します。

研修で学んだ知識は、現場に戻ると元の習慣に押し戻されがちです。日々の1on1や声かけの直前に「調律のヒント」が届くことで、関わり方の変化が習慣として定着しやすくなります。

導入事例:個人に応じた動機づけで人材育成を進める

JR東日本の水戸土木設備技術センターでは、一人ひとりに応じた動機づけを行う人材育成にAttunedを活用しています。導入後は、部下が上司からのサポートと理解をより感じるようになったといいます。学校法人角川ドワンゴ学園では、モチベーターの可視化とAI TalkCoachの活用により、1on1への心理的なハードルが下がったという声が上がっています。

まずは自分のチームの「音」を聴いてみませんか?

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よくある質問

Q. 調節と調律の違いを一言でいうと?

調節は「全体の量や強さを上げ下げすること」、調律は「一つひとつ違うものを、共通の基準に合わせて整えること」です。組織でいえば、調節は全社一律の制度や施策、調律は一人ひとりの内発的動機に合わせた関わり方を指します。

Q. 調律型マネジメントとは何ですか?

メンバー一人ひとりの内発的動機を把握し、チームの目標という共通の基準に向けて、任せ方・伝え方・フィードバックを個別に合わせるマネジメントです。「基準を決める→聴く→合わせる→聴き直す」のサイクルで継続的に行います。

Q. 調節型の施策はもう不要ですか?

不要ではありません。給与や労働条件など、不足すると不満を生む「衛生要因」は調節で整える必要があります。調節で土台をつくり、その上で調律によって意欲を引き出す、という役割分担が効果的です。

Q. 部下の内発的動機は、どうやって把握すればよいですか?

1on1でのヒアリングに加えて、モチベーションアセスメントなどの客観的なデータを併用するのがおすすめです。上司の感覚だけに頼ると、自分の価値観を相手に投影してしまい、ズレに気づきにくくなります。

Q. 調律はどのくらいの頻度で行うべきですか?

内発的動機の把握は、入社時や異動時に加え、少なくとも年1回は見直しましょう。日々の状態の変化は、2週間に1回程度の短いパルスサーベイや定期的な1on1で確認すると、ずれを早めに見つけられます。

まとめ:調節で土台を、調律で響きを

調節は、組織全体に同じ施策を届け、不満をなくすための整え方です。調律は、一人ひとりの違いを活かしながら、チームを共通の基準に合わせていく整え方です。

価値観が多様化し、エンゲージメントの差の多くがマネージャーの関わり方に左右される今、調節だけで組織の「響き」を変えるのは難しくなっています。まずは調節で公正な土台を整え、そのうえで次の4ステップで調律を始めましょう。

  1. 基準音を決める(チームの目的と期待値をそろえる)
  2. 一人ひとりの音を聴く(内発的動機を把握する)
  3. 合わせる(任せ方・伝え方・フィードバックを個別化する)
  4. 定期的に調律し直す

調律は、才能ある一部のマネージャーだけの特技ではありません。データと仕組みがあれば、どのチームでも習慣にできます。

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