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3分でわかる行動経済学! ビジネスで役立つナッジとは?

〜『サクッとわかるビジネス教養 行動経済学』(阿部誠監修 新星出版社 )のまとめ〜

私たちは日々の生活の中で常に意思決定を迫られています。例えば、「目の前のスナック菓子を手に取るか」や「新型コロナウィルスのワクチン接種をするべきかどうか」など、実生活では意思決定の連続です。

しかし、日頃の意思決定では全てが合理的な判断をするとは限りません。好きなタレントが出ているCMの商品を買ってしまったり、「今日はたくさん運動したから」とダイエット中なのに高カロリーの食事をしてしまったりしたことは、どなたにもある経験ではないでしょうか。

このような、人間の行動の非合理的な面に注目したのが行動経済学です。その中でも相手に強制することなくプラスの行動を促進することができる「ナッジ」は近年注目されており、政府から企業まで幅広くそのナッジ理論が応用されています。

ここでは『サクッとわかるビジネス教養 行動経済学』(阿部誠監修 新星出版社 )より行動経済学の説明からビジネスに活かすナッジ理論を紹介し、行動経済学をビジネスに活かし、職場での生産性を上げる一手となる可能性を考察します!

著者

阿部誠

東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授。1991年マサチューセッツ工科大学博士号(Ph.D.)取得後、2004年から現職。ノーベル経済学賞受賞者との共著も含めて、マーケティング学術雑誌に論文を多数掲載。行動経済学の研究対象である人間の知覚バイアスや選好逆転に着目し、計量・統計モデルを用いて得られた分析結果をマーケティングに応用する研究を行っている。主な著書に『大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる』『東大教授が教えるヤバいマーケティング』(共にKADOKAWA)、共著書に『(新版)マーケティング・サイエンス入門:市場対応の科学的マネジメント』(有斐閣)などがある。


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1 行動経済学とは?

行動経済学 (Behavioral Economics)とは実際の人間の行動をもとに理論を形成しており、心理学経済学を合わせたハイブリッドな学問領域といわれています。行動経済学は消費者の動向を掴みやすいことからマーケティングの分野で注目を集めており、実用的な側面から様々なビジネスにも応用されています。この行動経済学で想定する人間像はこれまでの伝統的な経済学とはほどよく外れているのです。

合理性を求めた伝統的な経済学の限界

これまでの伝統的な経済学では人間は理にかなった行動をし、常に自分の利益を最大化する合理的な選択をするという考えが前提とされてきました。伝統的な経済学者たちは超合理的超自制的超利己的の3つの行動原理によって意思決定する人間を「ホモ・エコノミカス=経済人」と定義し、経済学の理想としました。

しかし、本当に私たちは常に合理的な行動ばかりでしょうか。例えば、健康に悪いとわかっていてもタバコを吸ってしまうし、「訳あり」や「限定」という言葉に惹かれて衝動買いをしたこともあるでしょう。このような伝統的な経済学では矛盾が生じてしまう人間の行動を解明するために登場したのが「行動経済学」なのです。

行動経済学=心理学+経済学

先ほどもあったように行動経済学は伝統的な経済学の要素を残しつつ、心理学を用いて実際の人間の行動を検証し、応用したものです。株式投資では株価が会社の業績などを反映して大きく下落した時、その株を持っている人の全てが売り払うべきだと考えるのが伝統的な経済学でした。そこに心理学の要素が加わることで、また値上がりを期待する人もいることのが説明がつき、結果的に保有し続ける人もいるのです。

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2 行動経済学を知って得られる3つのメリット

行動経済学を知り、深く理解することで3つの分野での応用が期待できます。

1 マーケティング

2 マネジメント

3 自己実現

1のマーケティングでは行動経済学を知り、人々の意思決定のくせを知ることで効果的な広告や販促を打つことができます。近年人気を集めるクラウドファンディングは同調効果利他性の2つの要因から大金を集めやすいのです。

同調効果はハロウィンの盛り上がりが年々加速していることからも分かるように、大多数と同じ行動を取ることで安心を得るという傾向を持っています。クラウドファンディングにおいても刻々と金額が増えていくのを目にし、自分だけ参加していないのは不安になり、周囲の動きに同調して支援する人が増えていくのです。

利他性はクラウドファンディングがただの出資ではなく、困っている人を助けるという側面が強く、見返りがなくても多くの支援金が集まります。これは経済的には非合理的ですが、社会貢献しているという感覚が投資のハードルを下げ、利他性を刺激するのです。

2のマネジメントでは行動経済学を利用したアンカリング効果ハーディング効果によって、部下や同僚に上手く手伝いを頼むことができます。

アンカリング効果は上司から任された大量の仕事を頼まれ、同僚に手伝って欲しい時に役立ちます。この大量の仕事をまず同僚に示し、それがアンカーとなって、その一部をお願いすれば、同僚は頼まれた分の仕事を少なく感じ、引き受けやすくなるのです。

ハーディング効果は集団から外れたくないという心理が働くことです。これは周囲のみんなに同調するよう促したい時に効果的です。人は「みんながやっているのに自分だけ、、」という状況に不安を感じるため、「〜さんもやってるから君にもこの仕事お願いできる?」というような一言を添えると快く引き受けてくれる可能性が高まるでしょう。

行動経済学を活かせば、人をより良い行動にナッジすることができるのです。

3の自己実現では行動経済学のナッジ理論を応用することで自分の行動をコントロールし、目標達成を手助けします。

例えば、健康な体になるというゴールを設定しましたが、痩せたいのについ食べ過ぎてしまうという課題がありました。ダイエット中なのに仕事帰りにスイーツを買ってしまったり、お酒を飲んだ後にラーメンを食べに行ってしまった経験がある人も多いでしょう。

その解決策としてデメリットを見える化することが挙げられます。具体的にはワンサイズ小さい服を日頃から着ることで太ることへの危機感を感じ、食の誘惑に負けにくく、目標達成への近道となるでしょう。

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3 行動経済学から見た新型コロナワクチン接種

新型コロナウイルスの感染を防ぐべく、現在も世界中でワクチン接種が進められています。このワクチン接種には行動経済学の観点から現象を説明できることが多く、その一部を紹介します。

利用可能性ヒューリスティック

利用可能性ヒューリスティックとはなじみのあるものやよく見聞きするものの頻度や確率を過大評価してしまう意思決定プロセスのことです。ワクチンを避ける心理的要因として最も大きいのが「副反応のリスク」です。副反応が起こったというニュースや情報は記憶に残りやすいため、実際の数よりも頻度が高いと感じてしまうのです。

また、ワクチン接種を進めていきたい政府側も利用可能性ヒューリスティックを利用しています。その一つが有名人をモデルに起用したCMであり、ワクチン接種を身近に感じさせるだけでなく、単純接触効果によって取り残されたくないという心理を促しています。

確証バイアス

SNSに流れる信頼性の低い情報を信じてしまったり、ワクチンに対する偏見を持ってしまう心理には自分の都合の良い情報に偏ってしまう「確証バイアス」が働いています。

さらに、「自分はコロナにはかからない」というような自信過剰の心理は8割の人が「自分は運転が上手い」と感じている実験データに似ており、一種の確証バイアスとも言えるでしょう。

このように、人間の選択は合理的な行動ばかりではなく、感情に影響されることが多く見られます。ワクチン接種のような自身の健康というような大切な問題に直面した際はヒューリスティック(直感的に考える)よりも、システマティック(冷静かつ客観的に熟考する)に判断していくことが大切なのではないでしょうか。

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4 ナッジによって人々の行動をデザインし、より良い社会へ!

ナッジとは2017年にノーベル賞を受賞したリチャード・セイラー教授が提唱している理論で相手に強制させることなく望ましい行動を取らせることができます。行動経済学の一部であるナッジは世界中の政府や企業が活用し、大きな注目を集めています。ここではナッジを実際に活用した3つの例を紹介します。

社員食堂の一工夫で従業員が健康に!(Googleの例)

一般的な社員食堂ではディスプレイに並んだサンプルからメニューを選ぶ形態であり、好物やいつも注文しているなじみのあるメニューに手を出しがちで、サラダは敬遠されていました。そこで、Google社では食堂の一番目立つ位置にサラダを無料のバイキング形式で設置することで、野菜を取るのが当たり前というデフォルト(あらかじめ選ばせたい選択肢を初期設定とすること)の状態を作り上げました。

これによって、食堂を利用する従業員は「無料だし、野菜をたくさん取らないと損だ」と考え、皿いっぱいに野菜を盛り付けるようになったのです。

利他性を刺激し、納税率を向上!(イギリス政府の例)

イギリスではナッジを利用し、利他性同調効果を刺激することで納税率を上昇させました。納付期限を超過していても納税をしない住民に対して単に納付をお願いするのではなく、実際にどのように税金が使われているかを明示することで、未納税者の利他性をくすぶり、納税を前向きに考えるように仕向けたのです。また、通知書にほとんどの人が期限内に納付している事実を記載し、同調効果によって納付を促しました。

その結果、対象者の納税は促進されたのです。

灰皿を人気投票箱にし、タバコのポイ捨てが激減!(イギリスのNPO団体の例)

あるイギリスのNPO団体はロンドンの街でのタバコのポイ捨てが蔓延していることに悩んでいました。そこで、同調効果を利用し、灰皿を投票箱にし、2つの人気サッカー選手の名前を記載しました。すると、喫煙者たちはタバコの吸い殻を箱に入れて投票を始めたのです。

その結果、タバコのポイ捨てを減らすことに成功し、小さな工夫のナッジが大きな成果へと繋がったのです。

このように企業や団体の意思決定に行動経済学が多く取り入れられてるかがわかります。ナッジ以外の様々な理論に興味がある方は筆者の著書と併せて相良奈美香の「行動経済学が最強の学問である」を読むのもいいかもしれません。

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5 ビジネスにナッジを活かす

以上が、『サクッとわかるビジネス教養 行動経済学』(阿部誠監修 新星出版社 )のまとめでした。次に、書籍からヒントを得て、ビジネスにナッジを生かすための考え方について、筆者が考えてみたいと思います。

職場で同僚や部下をマネジメントし、自己実現を手助けする際にも行動経済学の考え方を活用できるとしたらどのようなことでしょうか。例えば、部下に資格をとってもらう必要がでてきたとします。

普通に「資格を取って」と伝えただけでは、すんなりやる気を出してくれたら良いですが、そうでない場合は「なんで私が?嫌です」と言われかねませんよね。

次に「資格を取ったら手当が出るよ」といって、報酬で釣ることなどが考えられるでしょう。

ですが、内発的動機を活用すれば、その人のモチベーターにあわせた言い方でやる気を引き出【ナッジ】しつつ、上司部下も嫌な思いをすることなく、双方がWIN-WINになるスマートなコミュニケーションが可能になります。

Attunedでは、心理学者とデータサイエンティストのチームが、仕事に関係する内発的動機づけを洗い出し、クラスター化と検証を経て 11 個に絞り込み、それらの11の内発的動機のことを、動機づけるモノ・コトという意味で「モチベーター」と呼んでいます。

さらに、55の質問からなるモチベーションアセスメントを受けていただくことで、個人にとってどのモチベーターが最も重要なのか、どのような仕事で最高のパフォーマンスを発揮するのか、どのような環境で最も活躍する可能性が高いのかを示すモチベーター レポートを提供しています。

自身のやりがいや内発的動機を可視化したい人はこちらからAttunedの無料トライアルを試してみてください!

〜用語集 Glossary〜

Attuned : 内発的動機を可視化できるSaaS型のHRツール

アンカリング効果 : 先に与えられた情報により結論が左右される認知バイアスの一種

確証バイアス : 都合のいい情報ばかり集め、反証する情報を無視してしまう傾向のこと

行動経済学 : 人間の非合理的な行動を分析する、心理学と経済学を融合させた学問

単純接触効果 : 繰り返し接触をすることで相手に親しみが増す効果

同調効果 - 無意識に考えや行動を周囲に合わせてしまう現象

ナッジ(理論): 相手に強制させることなく望ましい意思決定を誘導すること

ハーディング効果 : 安心感を得るために周囲の人々と同じ行動をとる傾向のこと

ヒューリスティック : 直感や先入観で答えに近いものを見つける思考法

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