「職場でのインシビリティ行為(無礼)」とは?ハラスメントとの違い

「職場でのインシビリティ行為(無礼)」とは?ハラスメントとの違い

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米国の研究では、職場における「インシビリティ行為(無礼)」が年間で 270億ドル規模の経済的損失 を生んでいると報告されています。

無礼とは、強い意図を持ったハラスメントではなく、曖昧で低強度な逸脱行為を指します。

たとえば、人の発言をさえぎる、当人のいないところで否定的な話をする、会議中にスマートフォンをいじる...

こうした小さな行為が、組織の健全性を損ねるのです。

本記事では、無礼の定義やハラスメントとの違い、アメリカで注目が高まる背景、日本企業への示唆について整理します。


目次

1 職場でのインシビリティ行為(Workplace Incivility)の定義
2 アメリカで注目が高まった背景
3 ハラスメントとの違い
4 日本企業における課題と示唆
5 企業が取り組むべき対応
6 おわりに


1. 職場でのインシビリティ行為(Workplace Incivility)の定義

学術研究では、は次のように定義されています。

「対象者を傷つける意図が曖昧で、職場における尊重の規範に反する低強度の逸脱行為」

つまり「悪意があるのかないのか判別しにくいが、受け手に不快感を与える行為」です。

例として:

  • 挨拶を無視する

  • 人の話を遮る

  • 軽んじる発言をする

  • 打ち合わせ中に別作業をする

これらは一過性の「何気ない行為」であっても、繰り返されれば組織全体に深刻な影響を及ぼします。

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2. アメリカで注目が高まった背景

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(1)政治的分断の影響

2024年の米国大統領選挙をはじめ、職場に政治的な話題が持ち込まれる機会が増えています。

近年は職場において、かつてとは異なり政治の話はタブーではなくなりつつあるがものの、やはりセンシティブであることは確かで、一歩間違えば「インシビリティ行為(無礼)」へ発展します。

世界的な地政学リスクも相まって、「インシビリティ行為(無礼)」のリスクは高まっているのです。

(2)研究領域の広がり

従来はHR領域で扱われてきた「インシビリティ行為(無礼)」が、近年は ビジネス倫理や経営学のテーマ としても論じられています。

たとえば「女性は男性より沈黙を選びやすい」といった性差の研究も進み、インクルージョンやDEIとの関連が注目されています。

(3)出社回帰による再燃

コロナ禍でリモートワークが広がった時期には、物理的距離が無礼の発生機会を抑えていました。しかし出社回帰が進む現在、対面コミュニケーションの場が増え、再び「インシビリティ行為(無礼)」が目立つようになっています。


3. ハラスメントとの違い

「インシビリティ行為(無礼)」とハラスメントは混同されがちですが、次の点で区別されます。

  • 意図

    • ハラスメント:対象者を意図的に傷つける行為

    • 「インシビリティ行為(無礼)」:意図が曖昧で、不快感を与えるが明確な攻撃ではない

  • 継続性

    • ハラスメント:繰り返され、標的が明確

    • 「インシビリティ行為(無礼)」:一過性の行為も含まれる

  • 法的対応

    • ハラスメント:法的に問題となり得る

    • 「インシビリティ行為(無礼)」:一般的に法的対応の対象外

「インシビリティ行為(無礼)」は「標準的な行為」と「ハラスメント」の間にある グレーゾーン と言えます。

国や文化によってその解釈は異なり、企業の対応方針が分かれるところです。


4. 日本企業における課題と示唆

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(1)「〇〇ハラ」への過敏さ

日本ではセクハラやパワハラといった「ハラスメント」への認知は高い一方で、「インシビリティ行為(無礼)」はすぐに「ハラスメント」と一括りにされがちです。その結果、管理職が萎縮し、適切な指導まで避けてしまうケースも見られます。

(2)グレーゾーンの理解不足

従業員自身が「これは『インシビリティ行為(無礼)』なのか、ハラスメントなのか」を判断できないことも多いのが現実です。そのため、曖昧なまま放置されるか、逆に過剰に問題視されてしまいます。

(3)必要なのは「指針」

今こそ日本企業に求められるのは、「『インシビリティ行為(無礼)とは何か」「どのような行為が対象となるか」 を明文化し、社員に浸透させることです。ハラスメントポリシーは整備されつつありますが、「インシビリティ行為(無礼)」へのガイドラインを持つ企業はまだ少数派です。


 

5. 企業が取り組むべき対応

  • 「インシビリティ行為(無礼)」の定義を共有する
    ハラスメントと区別したうえで、自社の文化に照らして「望ましくない行為」を明示する。

  • 教育・研修の導入
    日常のコミュニケーションに潜む無礼をケーススタディで学び、気づきを促す。

  • 現場の声を吸い上げる仕組み
    サーベイや1on1で「人間関係の困りごと」を可視化する。

  • リーダーの模範行動
    上司が率先して挨拶や感謝を実践し、部下の意見を遮らずに聞くことで、文化が変わる。

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おわりに

「インシビリティ行為(無礼)」はハラスメントほど深刻に見えないため、軽視されがちです。しかし実際には、離職率の上昇や生産性低下といった 経営リスク に直結します。

日本企業にとって重要なのは、「『インシビリティ行為(無礼)』をゼロにする」ことではなく、「無礼が生じたときにどう扱うか」を全員が理解している状態 をつくることです。

ハラスメント対策の次の課題として、今こそ「インシビリティ行為(無礼)」に光を当てるべき時が来ています。


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