
東日本旅客鉄道株式会社 様
個人に「応じて、適切な」動機づけを行う人材育成にAttunedを活用
組織心理学に基づいて開発されたモチベーター・アセスメントとエンゲージメントのサーベイを用いて、個人や組織、チームのモチベーターを可視化・改善するAttuned が3分でわかる資料です。
ダウンロードはこちらAttuned によるモチベーションアセスメントでは,価値観としての仕事のモチベーション要因を測定することができます。
本稿では、オハイオ大学博士後期課程在籍中でモチベーションを主な研究領域としている三上佳祐氏に、Attuned利用者のモチベーションを分析したThe State of Motivation Report 2025 を読んでいただき、考察をいただきました。また、実践におけるアセスメントのさらなる利⽤可能性についての示唆についても触れてくださっています。
データでモチベーションを見た時の世代間の違いや、一貫している点、組織との相互作用など、実務に応用できる知見が盛りだくさんです!
目次レポート結果の考察:世代やキャリアステージでモチベーションは異なる (1)規範的価値観の可能性:モチベーションが職場で意味すること (2)世代別⽐較:キャリアステージでモチベーションは変わる? |
今回のレポートに基づいて、筆者が考えたこととして3つの異なる視点から考察を述べさせていただきます。
筆者がまず注⽬したのは年別平均スコア(2018-2024)です。この結果から、各平均スコアに変動はあるものの、⼤きなトレンドはほとんど変わらないことが⾒て取れます。すなわち、ファイナンス、安全性、競争性、利他性、ステータスは⼀貫して上位に、続いてフィードバック、社交性、成⻑、創造性が中位に、最後に⾃律性と合理性は⼀貫して下位に位置しています。
モチベーション研究の観点から、これらの結果は、理論や実証的知⾒に沿う結果と⾔えます。例えば、ファイナンスやステータスは広くインセンティブとして重要なモチベーション要因であることが様々なメタ分析で⽀持されています(Cerasoli et al., 2014; Jenkins et al., 1998; Kim et al., 2022)。
競争性は、古くから研究されてきた達成動機や有能感(例えば,McClelland et al., 1953)と関連しています。つまり、⾃分が優れたパフォーマンスを発揮できるような事柄を追求したい(⾃分の能⼒に⽐べて課題が簡単過ぎるあるいは難し過ぎてはいけない)という欲求を有していると考えられるのです。また、安全性や利他性は、それぞれ役割曖昧性や⼈間関係等と関連すると想定できますが、これらはストレスを引き起こすという意味でストレッサー要因であると考えられます。
これらを踏まえると、多くの組織成員は、仕事の評価に⾒合う報酬が得られ(ファイナンス、ステータス)、かつチャレンジングな仕事の機会が与えられる(競争性)⼀⽅で仕事がきちんと構造化されていて(安全性)⼈間関係によるストレスが少ない(利他性)ことを重要視すると考えられます。実際、このような価値観は、⼀⼈ひとりにユニークな価値観というよりも規範的な価値観として多くの組織成員に共有されていることが⽰されています(Wood et al., 2019)。
一方で、世代別スコアをみると、世代による分散が⾒られます。例えば、Z 世代、X 世代、そしてベビーブーマーではファイナンスの順位は4位(スコア⾃体が⾼いことに変わりはない)ですが、ミレニアルでは1位でスコアも突出して⾼く位置しています。この反対の傾向が競争性では⾒られます。つまり、Z 世代、X 世代、そしてベビーブーマーでは、競争性は 2番⽬に⾼いですが、ミレニアルでは5番⽬です。
しかし、これが世代による違いなのか、それとも年齢やキャリアステージによる違いなのかは分かりません。筆者としては後者の可能性が⾼いと推察しています。なぜならば、2025 年現在において、ミレニアル世代は結婚や育児といったライフステージに合致するため、経済的側⾯が重要となる時期です。
⼀⽅で、Z 世代は働き出したばかりであるため経済⾯よりも仕事のやりがいを重視するかもしません。反対に、X 世代やベビーブーマーは⼦育てが終わり、経済的な⼼配が減ることで再び仕事へのやりがいを求めるようになると考えることができるでしょう。実際、キャリアステージによる違いが真実であれば組織としては対応が容易です。
しかし反対に、世代の違いとなると、新たな世代の出現とともに組織はその対応を常に調整していく必要があり、より困難な対応と⾔えるでしょう。このような年齢と世代のどちらの影響なのかを区別するためには、タイムラグ(縦断データ)を⽤いることで世代による影響のみを抽出する必要があり(Twenge et al., 2010)、今後も調査を継続することで可能となるでしょう。
もう1点筆者が考えるのは、このアセスメントから得られるスコア、つまり回答者の価値観は何を反映しているのかという問いです。すなわち、なぜ回答者はその価値観を重要視するのかということです。
一つの可能性として、組織において重視される事柄が反映されているということがあり得えます。例えば、パフォーマンス・マネージメントにおける評価基準は,組織成員の⾏動や認知に影響を及ぼします(例えば、Pritchard et al., 2008)。つまり、組織が評価の場⾯で何を重視するのかが組織成員に対して重要なシグナルを送るのです。
この観点で考えると、順位の低い項⽬は組織において重視されない項⽬の可能性があります。例えば、仕事をする際に合理的で⾃律的に仕事を進めること、また仕事を通した⾃⼰成⻑や、仕事の中で創造性を発揮することは直接的には評価に関連しないかもしれません。反対に、他者よりも優れたパフォーマンスを発揮すること(競争性)や協⼒的に仕事を進めること(利他性)は評価により結びつく可能性があります。
このように考えると、スコアには少なからず組織的な要因が反映されていることもあり得ます。もしこれが事実であれば、スコアが有する意味は単に個⼈差の測定にとどまらず、組織全体の価値観や環境に及ぶかもしれません。しかしながら、あくまで筆者の仮説に過ぎないため、さらなる分析が必要です。
以上、全体的には組織成員が重視する価値観には共通項があり、加えて年齢(あるいは世代)によるバラツキも存在し得ると考えられます。価値観は⼀⼈ひとりユニークであると考えると、実践的には、既に Attuned で提唱されているように 1on1 ミーティングでの利⽤などが考えられます。
そのような個別の視点は極めて重要である⼀⽅で、レポートから⾒て取れるのは,価値観にはある程度の共通項が存在するという点です。そのような視点は、あらゆる組織で取り⼊れられるベストプラクティスという考え⽅に通じる点があります(Wood et al., 2019)。したがって、個⼈、個別の組織、業界に関わらず、あらゆる組織において重要な価値観の同定・アセスメント、そしてそれらと関連する要因の検討といった、1on1 とはまた異なる視点からモチベーションアセスメントを使⽤することもできるでしょう。
特に、どのようなアウトカムと関連するのかという問いは、実際にモチベーションアセスメントで測定される価値観の役割について検証する上で極めて重要です。この価値観の役割という点について、今回のレポートからは逸脱しますが、次に person-organization fit(以降、フィット)の考え⽅を紹介し、実践的な意義について述べます。
職場における価値観の役割について特に重要な考え⽅が「フィット」です。簡単に⾔えば、フィットは、「組織成員や組織が求めるニーズがお互いに補完関係にあるか、あるいは似ていることによる組織成員と組織の⼀致」と定義されます(Kristof-Brown et al., 2005)。フィットの内容には、パーソナリティ、⽬標、スキルなど多くが含まれますが、価値観もその1つです。
多くの研究から、フィットは組織成員の仕事満⾜、組織コミットメント、離職、そしてウェルビーイング等と関連することが報告されています(Kristof‐Brown et al., 2023; Kristof-Brown et al., 2005;)。もともとフィット研究は、attraction-selection-attrition (ASA) model(Schneider, 1987))に基づいて提唱された概念です。ASA モデルは、個⼈は⾃分の価値観に合致する組織で働きたいと惹きつけられ(attraction)、組織はそのような個⼈を採⽤し(selection)、組織の価値観と合致しない者はやがて組織を離れる(attrition)という⼀連のプロセスを記述するモデルです。
そのため、フィットは特に採⽤・アセスメント場⾯において有益な⽰唆を与えます。つまり、組織の価値観や特徴に合致する候補者を採⽤するとことで個⼈と組織双⽅への利点が想定できるのです。
モチベーションアセスメントは個⼈の価値観を測定するツールですが、例えば、同じ職場における組織成員の平均値をその組織の価値観として定義することが可能です。そして、採⽤時に候補者の価値観を測定し、組織のプロファイルと⽐較することでフィットを検討することができます(もちろん、パーソナリティ尺度と同様、あくまでも採⽤を決める際の1要因に過ぎません)。
このようにして、1on1 とはまた異なる、アセスメントの利⽤可能性があり得るかもしれません。ただし、実現に向けては困難な壁もあります。特に、フィットそのものの測定の難しさは議論されており、単に組織の得点と個⼈の得点を差し引くだけでは不⼗分であるとの指摘もあります(Edwards, 1994; Kristof‐Brown et al.,2023)。そのような課題をクリアできれば、モチベーションアセスメントのさらなる利⽤可能性が広がるでしょう。
現在、オハイオ大学(Ohio University)博士後期課程在籍(産業·組織心理学専攻)。主な研究領域はモチベーション(特に自己調整、自己調整学習)、トレーニング、学習、パフォーマンス、computational modeling。特に、学習やパフォーマンス場面におけるダイナミックなモチベーションプロセスを記述することで、モチベーションの役割を理解するとともに、実践で役立つ視点(例えば、潜在的な介入ポイントの同定)を見出すことを大きな目的としている。
Researchmap: https://researchmap.jp/keisukemikami
ORCID iD: https://orcid.org/0000-0001-7383-8849
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